SPECIAL INTERVIEW

「2017ヤングジョッキーズシリーズ」
スペシャルインタビュー

武豊騎手(栗東)編

競馬界を代表する中央・地方のトップジョッキーに、「2017ヤングジョッキーズシリーズ」に参戦している若手ジョッキーへのエールをはじめ、ご自身の若手時代のエピソードなどを語っていただきます。
最終回となる今回は、ご存知、武豊騎手のインタビューをお届けいたします。

(インタビュアー:矢作麗)

※インタビューは、
2017年10月25日のものです。

競馬界のサラブレッド、武豊騎手が若手時代を振り返る

矢作
本日は競馬界を牽引する武豊騎手に、『2017ヤングジョッキーズシリーズ』についてお聞きします。武騎手はこのヤングジョッキーズシリーズが行われていることはご存知でしたか?
武騎手
もちろん知ってます。ボクも出られるのかな、と思ってました(笑)。
矢作
いやいや(笑)
『2017ヤングジョッキーズシリーズ』は、今春より各地でトライアル戦が行われており、地方と中央の若手騎手がポイントで競い合うシリーズで、暮れの大井競馬と中山競馬でファイナルラウンドが行われます。
まずは、武騎手の新人・若手時代について、お話いただいきたいと思いますが、デビュー戦は1987年3月1日・阪神競馬でアグネスディクターに騎乗されました。初騎乗は今でも覚えていますか?
武騎手
よく覚えてますよ。子供の頃からジョッキーに憧れていましたからね。念願だったジョッキーになれたな、という思いが今も強く残っています。
矢作
デビュー戦にあたり、武騎手ご自身はどんな心境で騎乗されたのですか?
武騎手
すごく緊張するのかな、と思っていましたが、意外とそんなことはなかったです。
矢作
武田作十郎先生(元調教師)からはどんなアドバイスがありましたか?
武騎手
武田先生からは、"競馬は危ないから気を付けて、他の馬に迷惑をかけないように"と言われたことを覚えてます。
優しい先生で、あまり細かいことを指導されるタイプではありませんでした。
同厩舎には兄弟子の河内さん(現調教師)がいて、先生からは「見習いなさい」といったようなお言葉をいただきました。
矢作
その兄弟子の河内さんからは何かアドバイスはあったのですか?
武騎手
あまり言葉が多い方ではないので、「見て学べ」といった感じでしたが、聞けば何でも教えてくださいました。

デビュー年に重賞3勝!新人離れした競馬センス

矢作
翌週3月7日の阪神3R、芝2200m戦でダイナビショップに騎乗し、デビューから5戦目で嬉しい初勝利となりました。
武騎手
はっきり覚えてますよ!
雪が降った日で、まだ勝ったことがないのに、なぜか途中で「勝つんじゃないかな」と思ったことを覚えてます。
矢作
冷静だったんですね。
武騎手
不思議と"無我夢中で"ということはありませんでした。
矢作
この年、新人騎手としては驚異の69勝を挙げて最多勝利新人騎手を獲得されましたが、これだけの勝利数を挙げられた要因は何でしょうか?
武騎手
数多く乗せていただきましたから。前半はそうでもなかったのですが、夏あたりから少しずつ勝利数を伸ばすことができて、気が付いたら69勝という印象ですね。
矢作
夏以降から勝利数が伸びた要因は何かあったのですか?
武騎手
重賞レースの京都大賞典を勝たせてもらったり、注目度の高い菊花賞やジャパンカップといった大舞台で騎乗できた経験は大きかったと思います。
矢作
トップジョッキーに混じってレースできたことは収穫でしたか?
武騎手
やっぱり勉強になることが多いですね。
矢作
デビュー年に重賞レースを3勝されましたが、注目度の高いレースで騎乗するプレッシャーはありませんか?
武騎手
競馬ファンの注目度も高いですし、オーナーさんやスタッフの期待が大きいので、感じることはあります。ただ、そういったレースに出られるという事が嬉しいです。
矢作
そして、翌年には菊花賞でスーパークリークに騎乗し、GI初勝利を挙げ史上最年少でのクラシック制覇を遂げました。当時の思い出は?
武騎手
当時、ギリギリまで菊花賞に出走できるか分からない状況だったんです。
3〜4日前に出走できることが決まったのですが、その前からチャンスがある馬だと思っていたのでワクワクしました。
矢作
GI初勝利で得たものは?
武騎手
勝ってもおかしくない馬という思いがあったせいか、拍子抜けというか、「僕が菊花賞を勝っちゃった」って感じですね(笑)
子供の頃から夢見ていたGIレースを勝てたのが、どこか不思議な感じがしました。ただ、このレースで自信が持てたのは確かですね。
矢作
だいぶ研究されたのですか?
武騎手
GIレースに限らずどんなレースでも勉強しますよ、今でも。
レース映像を観たり、出走メンバーをチェックしたり、当日の馬場を確認したりと。スタートしてからも考えます。
矢作
スタートしてから、「あれ、予想と違ったな」なんてことも?
武騎手
大体違います(笑)でも、そこから切り替えて騎乗することも楽しいですよ。
矢作
数字だけを見るとスランプもなく、順風満帆の印象しかありませんが、騎乗や成績で悩むようなことはあったのですか?
武騎手
深刻に悩むようなことはありませんが、「もっとうまくなりたい」という思いは今でもあります。若手時代は、まだまだ騎乗技術がたりないな、という思いがありましたね。
矢作
トレーニング方法で悩むようなことはありませんでしたか?
武騎手
当時はランニングぐらいですね。でも、ハードな厩舎作業をやっていたので…というより、やらされていたので(笑)

競馬の至宝が語る、地方競馬の印象

矢作
その後のご活躍は周知の通りですが、武騎手といえば、各地の地方競馬でも精力的に騎乗されています。デビュー翌年1988年3月15日には、姫路競馬でグレートベンに騎乗し、地方競馬初勝利を飾りました。初めてのコースではどの辺りに注意して騎乗されてますか?
武騎手
当時のことはっきり覚えています。中央競馬とはサイズも違いますし、少し戸惑いましたが、順応するしかないですからね。ただ言えることは、競馬はどこであっても競馬なので。
矢作
現在の若手ジョッキーは、これから初めてのコースをたくさん経験することになると思います。そんな若手ジョッキーへアドバイスはありませんか?
武騎手
まずはレース前にしっかり準備しないといけないですし、各競馬場にはそれぞれに傾向やコースの特性があると思うので、そのあたりを掴むことが重要だと思います。
矢作
近年では、中央競馬と地方競馬の交流戦が盛んになり、人馬ともに行き交うようになりましたが、武騎手が新人のころは、あまり交流がなかったのではないかと思います。デビューした1987年の地方競馬といえば、的場文男騎手が通算1000勝を達成したり、石崎隆之騎手が年間256勝を記録するなど、諸先輩方が活躍されていました。武騎手は地方所属騎手や地方競馬にどのような印象を持たれていましたか?
武騎手
今ほど、交流がなかったのでちょっと居心地が悪かったような記憶が(笑)もしかしたら、中央と地方でお互いに対抗意識があったのかもしれませんね。
矢作
今回、このインタビューでは的場文男騎手にもご協力いただいているのですが、どんな印象をお持ちですか?
武騎手
最初はちょっと怖かったです(笑)しばらくお話することもなかったので会うと緊張したり。その後、何度かお話してみたら優しい方なんだなと思いました。
今60歳(今年9月で61歳)でしたっけ?すごいですよね、尊敬します!

若手騎手へ贈る、騎手の心得

矢作
続いては、今後の競馬界を担う若手騎手へのアドバイスとして、質問いたします。
武騎手がデビューした頃と比べ、取り巻く環境もだいぶ変わったかと思います。昔と違って「今のジョッキーはいいなぁ」と思うことはありますか?
武騎手
ボクがデビューした当時とは競馬そのものが全く違いますからね。周りからの注目度やスポーツ性、さらにジョッキーのイメージも違うので、そのあたりは恵まれているのかもしれないですね。
でも、今でも関係はありますが、以前より師弟関係が薄くなっている印象を受けます。
競馬の世界に限らず、人間関係が少しドライになっている傾向があるかなと。その関係性が薄くなることで若手騎手にとってはチャンスを掴むことが難しくなってしまうことがあるかもしれません。
矢作
武騎手は今年で現役30年目を迎えられました。
騎手を長く続ける秘訣、日頃から気を付けていることはありますか。
武騎手
それは的場さんに聞いてください(笑)
騎手という職業をどれだけ好きで居られるか、ではないですかね!
そのためだったら、いろいろ頑張ることもできます。そして、誇りを持つことが必要!
矢作
若手騎手だからこそ、"今できること“"今だからやった方が良いこと“はありますか?
武騎手
トレーニングなど沢山ありますけど、個人的には若い頃に英語を勉強しておけばよかったな、と思います。世界で競馬が行われている通りコミュニケーションの重要性を痛感しました。チャンスはいつ来るかわかりませんから。
矢作
最後となりますが、『2017ヤングジョッキーズシリーズ』に参戦中の若手騎手へ、エールをお願いします。
武騎手
若手騎手の中でもよく話題に挙がってます。チャンピオンを目指し騎手同士が競い合うことでレベルアップが図れますし、何より若手騎手の励みになっているので良い企画だなと思います!


Vol.1 的場文男騎手
Vol.2 戸崎圭太騎手
Vol.3 武豊騎手

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