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ハイラップも脚色衰えず逃げ切り
上位地方馬はGDJを視野に遠征へ
台風19号の影響で雨は降った北海道だが、想像していたより風の影響はなく、門別開催には全く支障がなかった。その台風を考慮し、中央馬は急遽、門別入厩の予定を早め、最終追い切りを門別競馬場の坂路で実施した厩舎もあった。
馬場は火曜が不良、水曜が重、そしてエーデルワイス賞JpnIII当日が稍重とワンランクずつ回復した。当日は雨がパラつく時間帯もあったが、馬場に影響を与えるほどではなく、多くのファンがパドックに熱い視線を送っていた。
エーデルワイス賞JpnIIIは、中央馬にとって初めてのダート重賞。キャリアも1戦から4戦と浅く、過去16回で中央8勝、地方8勝と互角に戦っている数少ないダートグレードだ。人気は中央馬のウィッシュハピネス、ノットフォーマルが1、2番人気。地元期待のステファニーランは3番人気だったが、単勝10倍以下はその3頭しかおらず、優劣をつけ辛いメンバー構成ながら意外と人気は偏った。
しかし、レースとなると、速い競馬を経験してきた中央馬に軍配が上がった。レース後、「速かったー(笑)」と乗り味の良さに笑みがこぼれた戸崎圭太騎手のウィッシュハピネスが、圧倒的なパフォーマンスで重賞初制覇を飾った。
中央で逃げ切り勝ちの馬が揃った今年は、前半のペースに地元馬たちは戸惑う可能性が高いと思った。前半3ハロンの各ラップは12秒1-11秒0-11秒6=34秒7と、やはり地元馬にとってはかなり速い流れが展開されたが、意外と地元馬たちも道中は喰らいつき、馬群が密集した形で進んだ。
しかし、直線でのエンジンが違った。このペースで行きながら、最後まで脚色が衰えなかったウィッシュハピネスは、最後は追うところなく後続に3馬身差をつけた。地元馬は、好位の内にいたジュエルクイーンが2着に食い込み、2番手につけたネガティヴは3着に頑張ったが、こちらが想像していた以上に健闘と言える内容だった。
ウィッシュハピネスは、ダートでの圧倒的なパフォーマンスを続けたが、「まだ芝がダメとは決め付けないであらゆる可能性を見出したい」と沖芳夫調教師が話していたように、今後のローテーションが非常に楽しみだ。
対照的に、2番人気のノットフォーマルは12着に敗れた。「返し馬の雰囲気からダート適性は高く感じましたが、肩ムチを入れても全然進んでいきませんでした」と、黛弘人騎手は肩を落としていたが、実戦における初ダートの難しさを改めて感じさせる結果だった。
さて、グランダム・ジャパン2歳シーズンでポイントを獲得した馬たちは、当然シリーズチャンピオンを目指す陣営も出てくる。2着のジュエルクイーンは笠松のラブミーチャン記念、3着のネガティヴは川崎のローレル賞を目指す予定だ。昨年はカクシアジが、エーデルワイス賞JpnIIIの敗戦(7着)からシリーズチャンピオンに輝いただけに、ポイントゲッターの動向から目が離せない。
戸崎圭太騎手コメント
速さにビックリでした。それでも、折り合いもすぐつきましたし、最後まで脚色が衰えることなく駆け抜けてくれました。距離が延びても対応できそうな、レースの上手なタイプで、今後が非常に楽しみですね。
沖芳夫調教師コメント
台風の影響も考慮し、輸送日を早めるなどした結果、体重が減らなかったのが何よりでした。母はダート3勝馬で、ダート適性が高いのは間違いありませんが、今後は芝も含めてオーナーと相談し、ローテーションを決めたいと思います。
取材・文:古谷剛彦
写真:中地広大(いちかんぽ)