第9回 金沢プリンセスカップ
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金沢競馬場で行われた今年初の2歳重賞「金沢プリンセスカップ」は、北海道から移籍2戦目のロージズインメイ産駒エムティサラが快勝!


 今年で第9回を迎える「金沢プリンセスカップ」は、2012年よりJRA認定競走となった地元牝馬限定の重賞競走である。この時期には、ホッカイドウ競馬でデビューした2歳馬たちが他地区へ移籍し始め、それまでの勢力図を一変させるという傾向が各地で見られるようになる。金沢競馬もその例外ではなく、当レースにも北海道からの移籍組が3頭出走。戦前の人気も、そのうちの2頭に集中する形となった。

 1番人気(1.8倍)の支持を受けたのは、これが移籍2戦目となるハッピールミエール(父スウェプトオーヴァーボード)。7月のデビュー戦「フレッシュチャレンジ(門別)」で惜しくも3/4馬身差2着となっているが、3着馬には9馬身の差をつける好内容の走りを披露。その時の勝ち馬ウチデノコヅチがJRAへ移籍してオープンの「クローバー賞」で4着し、レベルの高い新馬戦だったことを証明した。ハッピールミエールは、その後も4着、3着、2着、4着とホッカイドウ競馬では5戦して勝利を挙げることができなかったが、金沢に移籍して初戦の「こいこい祭特別」で初勝利を飾り、当レースの主役として駒を進めてきた。

 差のない2番人気(2.2倍)が、その「こいこい祭特別」で半馬身差の2着しているエムティサラ(父ロージズインメイ)。こちらも5月の「フレッシュチャレンジ(門別)」でデビューしている北海道からの移籍馬だが、その時の勝ち馬が「函館2歳S(GV)」「コスモス賞」へも駒を進めたタケルオウジで、3着馬は先日の「ジュニアグランプリ(盛岡)」を制したパーティメーカーという道営2歳トップクラスの馬に挟まれての2着。デビュー戦の内容からも、相当の素質馬であることが伺える。

 この2頭が人気を独占し、9月の「サファイヤ賞」で牝馬最先着となる3着に入ったウィンザカップ(父ファルブラヴ)が3番人気(10.3倍)、ホッカイドウ競馬からの移籍初戦となるファーストユウゼン(父アドマイヤコジーン)が4番人気(10.6倍)で、それ以下の8頭は60倍を超えるオッズ。「こいこい祭特別」の再戦、ハッピールミエールとエムティサラの一騎打ちムードが漂う中、12頭の2歳牝馬がゲートインした。

 朝から降りつづく雨により、馬場に水が浮くような不良馬場での戦いとなった「第9回金沢プリンセスカップ」。最もダッシュよく飛び出したのは、真ん中の7番枠からスタートしたベルノトライ(父キングヘイロー)。8番人気の低評価ながら、ハナを主張してレースを引っ張る。それに並びかけていったのが、5番人気のイヴシャンテマリー(父メイショウボーラー)。差がなくハッピールミエール、ソルティークイーン(父ハイアーゲーム)、ウィンザカップらも追走し、1枠1番からスタートしたエムティサラは中団の内ラチ沿いで脚を溜める。レースが動き始めたのは3〜4コーナーに差し掛かったところ。外に持ち出した2番人気エムティサラが先頭を進む2頭に並びかけ、勢いをつけて4コーナーをまわる。逆に1番人気ハッピールミエールは、前との差を詰めることができずに少し置かれるような展開。直線に入ったところで逃げていたベルノトライの脚色が鈍り、イヴシャンテマリーが抜け出して後続を引き離しにかかる。そこへただ1頭、外から襲いかかってきたのがエムティサラ。一完歩ずつ差を詰めて直線半ばでイヴシャンテマリーを捕え、ゴールでは2馬身半の差をつける完勝。逃げたベルノトライがなんとか3着を確保し、1番人気に推されたハッピールミエールは直線伸びずに4着という結果だった。

 優勝したエムティサラは、父ロージズインメイ、母セレジェイラ、母の父エンドスウィープという血統。ライスシャワーなどの生産者として知られる北海道登別市のユートピア牧場で生まれており、祖母に1990年の金鯱賞優勝馬マロングラッセを持つ良血馬だ。ホッカイドウ競馬時代は5戦1勝ながら、タケルオウジ、パーティメーカー、ブライトギャル、クリールジェニーらの強い相手と差のない競馬をしてきており、新天地へ移った2戦目でその本領を発揮したというところだろう。

 11月4日の未来優駿「兼六園ジュニアカップ(金沢)」では、地元デビュー組の有力牡馬勢と初顔合わせをすることになりそうだが、これまでに戦ってきた相手の質を考えると、エムティサラも決してひけはとらないはず。名門牧場出身、ホッカイドウ競馬出身の底力を、今後の大舞台でも披露していってほしい。


文:浜近英史(うまレター)

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