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地元の無敗馬が期待にこたえる
代打の鞍上は念願の重賞初制覇
昨年のグランダム・ジャパン(GDJ)2歳シーズンは、北海道から遠征して、この園田プリンセスカップを制したカクシアジが優勝。今年もその初戦には、北海道から3頭、笠松から2頭が遠征してきた。
しかし人気を集めたのは、地元の無敗馬2頭。3戦3勝のショウリが単勝では2.2倍で1番人気、2戦2勝のトーコーヴィーナスが2.4倍で2番人気だが、連勝馬券ではトーコーヴィーナスのほうが人気の中心となっていた。
1戦1勝で北海道から遠征してきたラブミーダイヤに、地元の人気2頭がスタート後の直線でハナを争った。そして1〜2コーナーを回るところで先頭に立ったのはトーコーヴィーナスで、ショウリも半馬身ほどの差で続いた。3コーナー手前からの勝負どころでは、北海道の3頭と笠松のティープリーズが接近し、6頭がほぼ一団に。しかし直線ではトーコーヴィーナスが突き放しにかかった。そしてゴール前、唯一迫ってきたのがティープリーズだったが、トーコーヴィーナスはこれを3/4馬身差で振り切っての勝利。1馬身半差の3着には、北海道3頭のうちもっとも人気がなかったユメノヒトが入った。
逃げ切り勝ちとなったトーコーヴィーナスに対し、2番手でプレッシャーをかけていったショウリが7着に沈み、ハナ争いから3番手に控えたラブミーダイヤも6着。トーコーヴィーナスのスピードが一枚も二枚も抜けていた。
悔しそうな様子は、ティープリーズの尾島徹騎手。「砂を被るのを嫌がっていたので、外に出すしかなかった」と。たしかに最後の3/4馬身という着差を考えれば、距離的なロスがなければ、もしかしてとも思える。しかしトーコーヴィーナスの吉行龍穂調教師は、「ハナに行った時点で勝ったと思いました。うしろから来る馬は絶対に抜かせませんから」と、相当に自信があったようだ。
殊勲の手綱は、デビュー12年目で重賞初制覇となった小谷周平騎手。もともとは、目下全国リーディングの木村健騎手で臨む予定だったが、ちょうど1週間前の開催から腰痛が悪化して騎乗を取止めていた。その時点では、さすがにほかのリーディング上位騎手は騎乗馬が決まっている。そこで白羽の矢が立ったのが、普段からトーコーヴィーナスの調教をつけている小谷騎手だった。小谷騎手には4人のお子さんがいて、間もなく5人目が産まれるという。この日は家族全員で競馬場での応援。「子どもとヨメさんと一緒に(口取り)写真を撮るのが、結婚してからのひとつの目標だった」という、夢をかなえた瞬間だった。
トーコーヴィーナスの今後について吉行調教師。兵庫若駒賞(10月30日)から兵庫ジュニアグランプリJpnII(11月26日)という地元を使うプランがまず1つ。笠松のラブミーチャン記念(11月11日)に遠征してGDJ2歳シーズンのタイトルを狙うという選択肢もある。門別への長距離輸送にはなるが、エーデルワイス賞JpnIII(10月16日)という可能性もなくはないとのこと。
吉行調教師はトーコーヴィーナスについて、デビューしたころから「いま3歳のトーコー3頭よりも実力は上」ということを話していた。"3頭"とは、GDJ3歳シーズン女王のトーコーニーケ、兵庫ダービーを制したトーコーガイア、兵庫2歳チャンピオンのトーコーポセイドンだ。この日のレースぶりを見て吉行調教師は、その自信をますます確かなものにしたようだ。
小谷周平騎手コメント
この馬が一番強いと信じていたので、積極的なレースをしようと、何度も心に言い聞かせて乗りました。自分はあたふたしてしまいましたけど、馬はどっしりとして、まだ遊んでいました。今まで悔しい思いばかりしてきたので、ゴール板を過ぎたときは涙が止まらなかったです。
吉行龍穂調教師コメント
幼いところもあって、まだ調教は五分か六分くらいの乗り込みしかできなくて、それでもよくなってきています。今回(の追い切りで)初めて1000メートルからびっしり併せることができて、それでも直線では遊んでいました。前走からのマイナス7キロはそのぶんだと思います。本格化は来年だと思います。
取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)